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テーマ:時を重ねる家

家の寿命はどのくらいと考えるべきでしょう?日本において木造住宅の減価償却年数は 22 年と大変短く設定されていますが、まるで家を消耗品として扱っ ているかのようです。 その一方で、経年変化による味わいや歴史的な景観など、時を経たからこそ持ちうる価値 に対する関心が高まっているとも感じます。木造の民家が何百年も生き続けているように、 本来家は私たち人間に比べて遥かに長い時間を生き続けることが出来ます。また、私たち の記憶の多くは空間と結びついているため、家を消費してしまうことは記憶を消費してし まうことのようにも感じます。長い時間をかけて人々のふるまいや記憶と結びつき、世代 を超えながら私たちの人生を豊かにしてくれる時間的 歴史的 な存在として家を再考して みるべき ではないでしょうか。 今年のテーマは「時を重ねる家」です。時を重ねるとはどういうことか?時や記憶をどの ように空間に織り込んでゆくのか?時と共に変化する生活にどのように対応してゆくの か?重ねられてきた時間 歴史や記憶 にどのように上書きしてゆくのか?家において継承 すべきものは何か?など様々な問題設定が考えられます。また、対象とする時間を過去と 未来どちらに向かわせるのか、あるいは対象とする時間の尺度 長さ をどのように設定す るかによって、異なる視点を見出すことが出来るでしょう。もしかしたら今回は新築より もリノベ ーションの提案の方が多いかも知れません。 北陸の家づくりコンペは今回で 30 周年という節目を迎えます。まさに時を重ねてきたコン ペであり、北陸という地域に特化して地域や風土と結びついた生活や住まいの在り方を問 い続けてきた稀有な存在です。その魅力と価値を今後どのように重ねてゆくべきなのか? 皆さんの提案が大きなヒントになりそうです。

  1. 北陸の地域特性を活かした住まい
  2. 心豊かで健康な住まい
  3. 地域や街の景観・安心・快適への貢献

審査員

審査員長 竹内 申一(金沢工業大学教授)
審査員 西本 雅人(福井大学准教授)
上原 雄史(富山大学教授)
他オダケホーム(株)より2名

(敬称略)

審査及び表彰

審査

部門別に行います

  1. 高校の部(高専1~3年含む)
  2. 短大・専門学校の部(高専4~5年含む)
  3. 大学・大学院の部(専攻科含む)

表彰

最優秀賞 1点(部門を問わず)賞金20万円
オダケホーム賞 各1点(部門を問わず)賞金7万円
特別賞 北日本新聞社賞
北國新聞社賞
福井新聞社賞
各1点(部門を問わず)賞金6万円
優秀賞 各部門2点まで 賞金5万円
佳作 各部門3点まで

※高校の部の賞金については、学校の取り組みとして先生方にもご指導いただいており、賞金の半額を記念品として学校へ贈呈いたします。

「第30回北陸の家づくり設計コンペ」審査結果

オダケホームが主催する「第30回北陸の家づくり設計コンペ」の審査が2024年9月に行われ、3部門、計11点の入賞作品と6点の佳作と1点の奨励賞が決定しました。今年度の応募総数は137点。たくさんのご応募ありがとうございます。
受賞されました皆様には、10/26の表彰式・プレゼンテーションのご案内をメール(大学・大学院の皆様)・郵送(短大・専門、高校の皆様学校宛)にてお送りしますので、ご確認のほどお願いいたします。
また当コンペでは、佳作・奨励賞を受賞された皆様に上位受賞へステップアップするために審査講評を個別で送らせて頂きました。ぜひご確認ください。
10/26の表彰式・プレゼンテーション終了後日からは、応募者全員に「第30回北陸の家づくり設計コンペ」の作品集を郵送いたします。今回の作品集は、30回目を記念し、これまでご支援いただいた審査員の先生方、受賞された方々からのメッセージも掲載しております。各大学・新聞社では受賞作品を展示もいたしますので、下記スケジュールをご覧ください。
◎審査員長の総評、受賞作品の講評は後日、HPでも公開しますので、お楽しみに♪

審査員総評 

30 年目という記念すべき今回のテーマは「時を重ねる家」でした。私たちは時間の中を生きていて、常に時を重ねています。つい数秒前という過去から、何千年という過去まで、歴史の中に生きていると言っても良いかも知れません。時間の経過と共に、様々なものが変化してゆきます。人や動植物、社会や環境、文化や価値観など常に変わり続ける世界の中で、私たちにとって家はどのような存在となってくれるのでしょうか。
コンペの審査の過程では、時を重ねるということがどういうことなのか?に加えて、時を重ねることによって何が変化し、どのような価値を持つのか?という点について、皆さんがどのような視点で考えてくれたかが評価のポイントになったように思います。加えて言えば、何を変化する要素、変化しない要素として考えるか?や、変化することをどのようにポジティブに捉えて空間の対応を考えるのか?といった点も、案の特徴や魅力を明らかにしてくれたのではないでしょうか。各賞に選出された作品は、魅力的な空間が提案されていることはもちろんのこと、上記の点において私たち審査員に明確なメッセージを送ってくれ、時を重ねるということについて様々な可能性を考えさせてくれた提案でした。
コンペの課題文にも書きましたが、本来家は私たち人間に比べて、遥かに長い時間を生き続けることが出来ます。そこに暮らす人々の生活や記憶だけでなく、まちの風景や地域のつながり、文化など、様々なモノやコトを次に繋いでゆく装置と言っても良いかも知れません。東京などの都市部に比べて、北陸のまちは変化がとても緩やかです。歴史的な建物や景観、文化もたくさん残っています。だからこそ時間というものについてじっくり向き合うことが出来るのではないでしょうか。今回のコンペへの参加が、皆さんにとって時間と建築の関係を考え続けるきっかけとなってくれることを期待しています。

審査員長
金沢工業大学教授 竹内 申一

入賞者発表

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最優秀賞

『大きさと暮らす家』

A63
中嶋 海成 福井大学大学院2年
川畑 奨太 福井大学大学院2年(2名共同)

—作品総評—

時を重ねる中で個々人の世界は拡張してゆき、同時に家の領域の認識も変化してゆくと考え、家を大きさのないものと捉えている点がとても興味深い。道が家を貫通することによって家に集落の拡がりが入り込むと同時に、家が集落に広がっても行く。そうした状態が継続してゆけば、もしかしたら集落全体を拡張した家のように認識できるかもしれない。時間による変化を世界の拡がりに対する認識の変化と結びつけ、家の在り方そのものを問おうとする姿勢に共感した。(竹内)

特別賞

オダケホーム賞

『のちのちしぇあはうす』

B62
髙間 海友 福井工業高等専門学校5年

—作品総評—

このタイトルが示す通り、シェアハウスとすることを想定した提案である。家族の家として設計されても、やがては住まい手が居なく(少なく)なるだろうから、それならば他の人を招いて、いろいろな人の時を重ねていくことを描いている。北陸地方にある空き家や一人住まいの孤住といった深刻な問題にも立ち向かうような内容である。新しい人が移り住むことをテーマにしているので、どうしても家が器のように描かれており、家と地域、文化、人などの関わりを描けるともっと良くなっていくと思われる。(西本)

北日本新聞社賞

『「余白」が残す 伝統のカタチ -散居景観を守る伝統的家屋のリノベーション提案-』

B1
大島 璃久 富山クリエイティブ専門学校2年

—作品総評—

現実的で堅めの案が多くなった短大・専門学校の部の中では、質と完成度が高い。カイニョを用いて北陸の家をかたどる試みはさほど革新的ではないが、この案は美しいプレゼンテーションで世代の交代を春夏秋冬や朽ち方に思いを馳せながらのナラティブで展開するため説得力がある。家の方は大きな外部空間が入ってきていてなかなか大胆だなと思えた。(上原)

北國新聞社賞

『輪郭のゆらめく家』

A98
内藤 三刀夢 福井大学大学院1年

—作品総評—

家と家の間にできた場所、車も通らず、誰のものでもなく、なんとなく残ってしまった場所。時を重ねるというよりも時が重なった場所といえるかもしれない。この作品はそんな路地に着目して、路地との関わり方を提案したものである。路地に対して壁を立てずに、三角屋根を接することで、路地を歩く人との新しい関係を作り出そうとしている。この路地を誰が歩くのかが見えないのが惜しい点であり、街の中に路地がどう張り巡らされているかを描くと、人が路地を歩く意味が表現できたと思われる。(西本)

福井新聞社賞

『集落が家』

A74
津戸 新太 福井大学4年

—作品総評—

家はどこにどう建てるのか。この案では、北陸の家は集落を繋いでコミュニティを作る道具である。無論、家は日常生活の場だが、ここでは、家の中から集落や海山にやってくる季節や人の息吹を感じられ、家のそこここに集落の一角に佇み「生」を確認さてくれるような場所がある。あまり複雑なかたちではない家だからこそ、北陸の集落に溶け込んでいくのだろう、という夢を見ながらの生活はロマンティックで、北陸らしい説得力がある。(上原)

優秀賞

大学・大学院の部(専攻科含む)

優秀賞作品

『舟の家』

A2
長谷川 昂大 福井大学4年

—作品総評—

豪雪豪暑の北陸には、保守的ながら世を良くする気配りを絶やさない人や、目立たないことを優先する人が多い。田んぼの真ん中にできるだけ複雑ではない家を描いている案に北陸の家を感じた。片隅のパースに北陸の風景を読み取ることができ、田で働く人や稲穂に広がる風景に囲まれた多世代の繋がりを感じる。土間を地面より少し低くすることには技術的抵抗はあるが、稲穂と同じ視線で世界を眺めたい気持ちは見てとれた。(上原)

優秀賞作品

『風景が映る家』

A49
油谷 哲匠 工学院大学大学院1年
鈴木 穂高 工学院大学大学院1年
川口 弘誠 工学院大学大学院1年
(3名共同)

—作品総評—

工業化された住宅の供給は快適な環境を全国に広めた一方で、風景を日本から奪ってしまった。それはこれからも起こるであろう。そうした流れの中に何にもとらわれない箱を挿入する提案である。言わば、変化するもの、変化しないものの二極対立を描いた作品であり、他にもそうした作品が見られた中で、その対比が非常によく描けていた。その対比を十分に描くための箱であったが、果たしてその箱の形が輪島の何を表現しているのかを描きれていない点が惜しむべき点である。(西本)

短大・専門学校の部(高専4〜5年含む)

優秀賞作品

『記憶のアルバム 「枠」による記憶の切り取りと継承』

B76
石橋 矢煌 石川工業高等専門学校5年
林 恭平 石川工業高等専門学校5年
(2名共同)

—作品総評—

在来木造工法の軸組部分を、写真のフレームであると見立てて、そのフレームが日常生活の瞬時、瞬時を記憶に残してゆくための機械であると考える設計へのアプローチには共感できる。建物平面をJ字型にして、家の「反対側」に適度な距離感を作り出して、日常の出来事に気付きのある家を考えることにも共感を持てる。ただ、玄関部分が閉じていたり、家の外に対して全く開いたところがないなど、もう少し考えればよかった、と思う点もある。(上原)

優秀賞作品

『時をかける家』

B81
本馬 颯太 石川工業高等専門学校5年
北川 真 石川工業高等専門学校5年
保地谷 日南 石川工業高等専門学校5年
(3名共同)

—作品総評—

2024年1月に起きた能登半島地震、この地震を題材とする提案は必ずでてくると思っていた。この作品はその地震からの復興、時を重ねることを見事に融合した素晴らしい提案である。家が崩れたからといって終わりではない。地震の前と後を重ねていく強さがこの作品から感じられる。時が重なることと階を重ねることをかけていることも秀逸である。プレゼンテーションの全体的なまとまり、パースの表現がもっと高ければ上位賞も狙えたと思われる。(西本)

高校の部(高専1~3年を含む)

優秀賞作品

『町の器』

C9
柴田 碧衣 富山工業高等学校3年
松本 弥夢捺 富山工業高等学校3年
(2名共同)

—作品総評—

器と呼ばれる構造体が、二枚の壁体の間にランダムに配置されている。それらは、雨水の浄化装置や、植物のプランターとして機能しており、自然を受け止めるための設えとなっている。この住居では、時を重ねるごとに自然が空間を埋め尽くしてゆく。やがて家の主は植物や生き物たちとなり、人はそこに住まわせてもらっているような不思議な環境となるだろう。人が自然の一部であることを常に意識することができる、刺激的で魅力的な空間である。(竹内)

優秀賞作品

『Memorial House』

C12
鍛治 うらら 高岡工芸高等学校2年

—作品総評—

こどもの時からいったい何枚の絵を描くのだろう。この家ではその書いた枚数が多いほど家族の時が重なっていく。この発想は障子に絵を貼ることから始まり、その障子が棚になり、構造体になり、家全体が障子のアルバムになる。棚の奥行きを利用しておじいちゃん、お父さん、息子、孫の絵を重ねる仕掛けを提案していて、時代が変わっても絵の描くことの不変さを表現していることに惹かれた。プランを単純にした方がこの障子棚の仕掛けをより表現できたと思われる。(西本)

佳作

佳作

『のっとぐらし』

A96
太田 陸斗福井大学3年

佳作

『巨大樹の面影』

A116
浜田 怜福井大学4年

佳作

『和紙のある暮らし』

B37
本江 菜央金沢科学技術大学校2年

佳作

『本で成長する家』

B79
門田 啓矢石川工業高等専門学校4年
池田 茉結石川工業高等専門学校4年
(2名共同)

佳作

『未完の岩屋』

C8
瀬山 愛花富山工業高等学校2年
安部 美音富山工業高等学校2年
(2名共同)

佳作

『時代を貼り合わせる家』

C10
中田 琴羽富山県立富山工業高等学校2年

佳作

『想創(そうぞう) 想う人・創る家』

B15
北野 大誠金沢情報ITクリエイター専門学校2年

🔷一次審査通過者発表

A2、A4、A27、A35、A43、A45、A49、A53、A57、A60、A63、A74、A78、A85、A86、A96、A98、A99、A109、A111、A116 、B1、B3、B15、B17、B18、B30、B31、B32、B33、B37、B40、B45、B51、B52、B54、B59、B62、B76、B78、B79、B81、B82 C3、C8、C9、C10、C12

今後のスケジュール 【表彰式・プレゼンテーション】

日時 2024年10月26日(土)14:00〜17:30
会場 富山県民小劇場オルビス(マリエとやま7F)
住所:富山市桜町1丁目1番61号(JR富山駅前横)
TEL 076-445-4531

表彰式・作品発表会

このコンペでは、建築を学ぶ学生が自分の作品を発表したり、テーマについて論議する機会が少ないことから、入賞者本人によるプレゼンテーションや、応募者、また当社設計士も参加してのディスカッションを行っています。互いにコンセプト、工夫やこだわりを存分に発表し、これからの北陸の家づくりについて、語り一緒に考える良い機会となることを期待しています。
このコンペが、設計者を目指す学生にとっての登竜門となり、又、地域の皆様と共に、北陸が培った住文化とこれからの家づくりについて考える契機になることを願っています。

※高校の部においては、先生方の熱心なご指導に感謝し、表彰金の半分を学校へ記念品として贈呈いたします。

作品展開催

◎表彰式・プレゼンテーションの後、最優秀賞、特別賞、優秀賞の作品展示を各会場で以下の日程にて巡回いたします。

福井大学 福井市文京3丁目9-1 10/29(火)〜11/5(火)
福井工業大学 福井市学園3丁目6-1 11/6(水)〜11/13(水)
金沢工業大学 野々市市扇が丘7-1 11/25(月)〜12/2(月)
金沢科学技術大学校 金沢市三社町11-16 12/9(月)〜12/16(月)
富山大学 高岡キャンパス 高岡市二上町180番地 12/18(水)〜12/25(水)
日本海ガス プレーゴ 富山市黒崎405-6 1/ 10(金)〜1/17(金)
富山新聞社 高岡会館 高岡市広小路1-15 1/20(月)〜1/26(日)
北日本新聞社カルチャーパーク高岡(まなぶん) 高岡市御旅屋町101(御旅屋セリオ6階) 1/28(火)〜2/3(月)

※その他、オダケホーム常設展示場にて作品展示予定。

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