第26回北陸の家づくり設計コンペ
★10月24日(土)表彰式&作品発表会が開催されました(くわしくはこちら)
テーマ:窓から広がる魅力ある家
「窓から広がる・・・」という表現には、次に展開する魅力ある何かを予感させるものがあります。今回は「窓」をテーマに、皆さんに居住環境への夢を膨らませた提案を期待しています。窓といえば、外を眺めるための住宅の部位、採光・通風のための開口という一般認識があり、住宅においては居間・食堂の大きな窓と各個室の小さな窓という形式が定着しています。このコンペでは、「窓」という言葉からスタートし、その機能性やイメージを少し拡張し、住居における開口部のあるべき姿を柔軟に考えることで、居住環境に新たな魅力を提案する能力を競い合ってください。
考えるスタートとして、歴史的住環境を参照することや、現代の家とライフスタイルの関係を分析することなど、様々なアプローチの方法が思い浮かびます。例えば、日本の居住環境の歴史を振り返ると寝殿造や書院造などがあり、内外の環境を調整しながら空間を分けるために、庇・縁側・建具が工夫され、そこに内外の中間領域として居心地のよいスペースが生まれました。また、現在多く存在する外壁の開口にガラス建具を嵌め込んだ奥行きのない窓に対し、小庇の付加や出窓形式とするだけでも、少し奥行感が生まれます。さらに意図的に奥行をもたせたスペースを設けることで、ウインドウルームのような心地良く寛げる新しい居場所が生まれるかもしれません。さらにこの発想を高窓や天窓に発展させることで立体的な魅力を生み出す可能性もあります。
ただし、アイディアを競い合うコンペですから、窓の大小に変化をつけただけの案や、庭がきれいに見える窓を大きく開けましたという案では、多数の応募案の中に埋没してしまいます。入選を目指すには、テーマに対して深く考察されていること、新しい発想が入っていること、提案のポイントが明快で魅力的であること、優れたプレゼンテーションであることが重要です。また、住宅として当然必要な下記の項目に対する提案も考慮に入れてください。
- 北陸の地域特性を活かした住まい
- 心豊かで健康な住まい
- 地域や街の景観・安心・快適への貢献
審査員
審査員長 | 蜂谷 俊雄(金沢工業大学教授) |
---|---|
審査員 | 濱田 修(濱田修建築研究所) 西本 雅人(福井大学講師) 他オダケホーム(株)より2名 |
(敬称略)
審査及び表彰
審査
部門別に行います
- 高校の部(高専1~3年含む)
- 短大・専門学校の部(高専4~5年含む)
- 大学・大学院の部(専攻科含む)
表彰
最優秀賞 | 1点(部門を問わず) | 賞金15万円 | |
---|---|---|---|
特別賞 | オダケホーム賞 | 各1点(部門を問わず) | 賞金8万円 |
北日本新聞社賞 | 各1点(部門を問わず) | 賞金7万円 | |
北國新聞社賞 | |||
福井新聞社賞 | |||
優秀賞 | 各部門2点まで | 賞金5万円 |
※高校の部の賞金については、建築科・建築クラブの取り組みとして先生方にも熱心にご指導いただいており、賞金の半額を記念品として学校へ贈呈いたします。
「第26回北陸の家づくり設計コンペ」結果
オダケホームが主催する「第26回北陸の家づくり設計コンペ」の審査が2020年9月に行われ、3部門、計11点の入賞作品と8点の佳作が決定しました。今年度の応募総数は139点。
表彰式・作品発表会
日時 | 2019年10月24日(土) |
---|---|
会場 | 富山県民小劇場オルビス(マリエとやま7F) TEL076-445-4531 住所:富山市桜町1丁目1番61号(JR富山駅前横) |
このコンペでは、建築を学ぶ学生が自分の作品を発表したり、テーマについて論議する機会が少ないことから、入賞者本人によるプレゼンテーションや、応募者、また当社設計士も参加してのディスカッションを行っています。互いにコンセプト、工夫やこだわりを存分に発表し、これからの北陸の家づくりについて、語り一緒に考える良い機会となることを期待しています。
このコンペが、設計者を目指す学生にとっての登竜門となり、又、地域の皆様と共に、北陸が培った住文化とこれからの家づくりについて考える契機になることを願っています。
作品展開催
北日本新聞社西部本社 | 高岡市あわら町 | 1/12(火)~1/18(月) 大変申し訳ありませんが、大雪のため日程が変更となりました⇒ 1/13(水)~1/18(月) |
---|---|---|
オダケホーム金沢展示場「彩雅」 | 野々市市柳町431番地 | 1/23(土)~1/31(日) |
オダケホーム高岡展示場「紬季」 | 高岡市京田628 | 2/4(木)~2/14(日) |
オダケホーム魚津展示場「咲楽」 | 魚津市住吉567-1 | 2/21(日)~2/28(日) |
※北日本新聞社西部本社は土日クローズしております
※オダケホーム常設展示場は毎週水曜定休です
審査員総評
新型コロナウイルス問題で世界が大混乱している状況で、コンペ応募者が激減するのではないかという懸念がありましたが、昨年よりも36%増の応募数がありました。さて、今回のテーマは「窓」でした。このタイトルからスタートし、イメージを膨らませて魅力ある住まいが提案できたでしょうか。
まず応募案を概観してみます。窓の形状に大小の変化を付けた案や、窓の外の景色を美しく見せる案、また、大きなガラス開口部が外観の特徴である案など、「窓」そのものに着目して変化を出そうとした案が多数ありました。また、「窓」を開口部と解釈することで、隣接する空間領域とのつながりを面白くしようとした案も多数ありました。「多数ありました」ということは、コンペ案としては平凡であったということです。
コンペはここからが重要です。多数の応募案の中で埋没しないように、独自の考察や論理の展開を試み、審査員が詳しく見れば見るほど「よく考えてある」と思える内容でなければなりません。「よく考えてある」とは、今回の課題ではどのようなことを意味するか。それは各入選案によって異なりますので、入選作として掲載されている図面と審査講評をよく見てください。同じようなテーマ設定で応募したにもかかわらず、残念ながら落選となった場合は、入選案との違いが何であったかを探ってください。それが理解できた時に何かが学べ、次への挑戦意欲が湧いてくるものです。また、一次審査の初期の段階で、スケッチ等が抜群に上手で目を引いた案もありましたが、二次審査でさらに詳しく見た時点で選外になりました。つまり、プレゼンテーションは抜群でも提案内容が平凡では選ばれないということです。
今回の課題に対して「よく考えてある」とはどういうことか。審査プロセスを振り返ってみます。課題趣旨からしますと、まず「窓」そのものについて深く考察し、機能性・意匠性の両面から斬新かつ面白いアイディアの提案があることを期待していました。しかし、このような提案はありませんでした。むしろ実務経験豊富な設計者の方に求めるべき課題であったかもしれません。今回選ばれた作品のほとんどは、「窓」という言葉からスタートし、窓のつくり方について提案するのではなく、住宅全体のイメージや空間構成、領域感のつくり方、視線の誘導などに独自性を表現しようとするものでした。また、さらに発展させて、家と社会の関係の新しさをアピールする作品もありました。コンペ作品の評価として、住宅単体のつくり方の独創性を提示して終わるのではなく、さらにその成果が社会にどのような影響を与える可能性があるかを考察して提案されていると、より高い評価を得ることができます。例えば最優秀賞とオダケホーム賞に選ばれた2作品を見てください。最優秀賞の作品は、シェアハウス的な住居のつくり方をベースに、明快な3層構成で街に開かれたファサード全体を「窓」と捉え、同時にコロナ以降の社会は変わり、家のつくり方も変わるといことを提案しています。オダケホーム賞の作品は、開閉可能な壁の状況が来訪者との関わりや活動によって変化し、街からの見え方が魅力的になることを提案しています。両案とも「窓」という題材を発展・拡大させることで、住宅としての独自性のみならず、社会性も提示しています。ここまで拡大解釈してもよいかという質問もありそうですが、審査の最終段階で審査員の間の議論を引き出し、「よく考えてある」と言える内容でした。
審査員長 金沢工業大学教授 蜂谷 俊雄
審査結果
画像をクリックすると拡大します。
最優秀賞
『3人の「自分」のための家 -コロナ以降の家のあり方-』
佐野 歩美
前橋工科大学大学院1年
―作品総評―
暮らしと社会の境界を「窓」と定義し、街に開かれたファサード全体を「窓」と位置付け、在宅勤務やリモート授業等を経験したコロナ以降の社会に対応した家の姿を提案している。3層構成の1階を「社会」、2階を「個人」、3階を「家族」と明快に別け、各場所で展開する物語を説明している。「窓」という言葉から出発し、社会が抱える大きなテーマを包含した論理の展開は見事であり、それを単純明快な構成と表現で描き出している。(蜂谷)
特別賞
オダケホーム賞
『滲出する間取り -まちの人によってひらかれる家-』
林 夏菜子
金沢科学技術大学校2年
―作品総評―
窓から出発して視線や領域感にテーマを拡大し、可動壁を用いて家全体の開閉を可能にすることで、住まい方、家のつくり方、社会との関係までも提案している。壁を全て閉じたシンプルな状態と、壁が全開した活気あるシーンの対比が面白い。壁が動く3段階の違いを平面図で示し、その場の活動や来訪者の存在によって壁が開いていくことで、壁の向こうに垣間見ることができる複雑な角度で展開する空間の重層性が楽しめる。(蜂谷)
北日本新聞社賞
『空を食べる窓の家』
宮西 夏里武(信州大学4年)
田中 優衣(信州大学4年)(2名共同)
―作品総評―
この案は町家が残存する地域における現代的な町家の提案である。町家が取り壊された歯抜け状態の土地を 地域の肯定的なヴォイドと捉えて、人が集う様子を見せることで町に活気を与えている。町家の形式を残しながら屋上に着眼し、開放的な空間を巧みに構築して、新しい提案として評価できる。道路側から屋根への動線が確保され、地域に開放されるくらいのおおらかさがあれば、より良い案になったと思う。(濱田)
北國新聞社賞
『育てる窓。育てる暮らし。「育てる窓」から広がる豊かな暮らし』
長井 翔吾 (石川工業高等専門学校4年)
徳成 奏夢 (石川工業高等専門学校4年)
東出 虎汰郎(石川工業高等専門学校4年)
浦島 里梨子(石川工業高等専門学校4年)
(4名共同)
―作品総評―
この案は格子にした窓で植物を育てていくものである。植物が格子を伝って成長していく様を人と人のつながりとして表現している。そしてこの案の最も面白い点は植物だけではなく、益虫に着目している点である。虫たちが住まう「インセクトホテル」をこの格子窓+植物で作り出しており、さらに虫はこの家から周囲の棚田に飛び立つことで農業を助ける役目もある。地域のつながり、家族のつながりを虫や植物に託したコンセプトは初めてではないだろうか。その独創性が評価された。(西本)
福井新聞社賞
『風景を廻る回廊 -1枚の壁がつなぐ二つの世界-』
井上 摩憲 (日本大学大学院2年)
小田島 立宜(日本大学大学院2年)
小川 朋大 (日本大学大学院2年)
宇佐見 拓朗(日本大学大学院2年)
(4名共同)
―作品総評―
この案は古来より部屋と部屋を繋ぐ半外部の回廊に着目して、この回廊を部屋化したものである。提案では回廊に家具を置 くことで「窓部屋」とし、従来の部屋(寝室)は半地下に配置することで、古来の部屋と回廊の平面的な関係を立体的に 処理した点が面白い点である。また、洗練されたプレゼンテーションやスケール感のある図面表現も審査員からの評価が高かった。発想は面白い反面、少し部屋にしすぎたために回廊らしさが失ってみえることはとても惜しい点であった。(西本)
優秀賞
大学・大学院の部(専攻科含む)
短大・専門学校の部(高専4〜5年含む)
高校の部(高専1~3年を含む)