HOME > 北陸の家づくり設計コンペ > 第28回北陸の家づくり設計コンペ

テーマ:在宅ワークが楽しい家

今回のテーマは「在宅ワーク」です。この2年間、新型コロナウィルス感染抑止対策が世界共通の最重要課題でした。その対策の一つとして、職場の密状態を避けるために在宅ワークが推進されました。インターネットの普及により、毎日会社に行って対面方式で仕事をするワークスタイルが突然変わりました。この影響はオフィス環境や住宅にも及んでいます。例えば、本コンペの主催者であるオダケホームの住宅の新築・改築においても、在宅ワークスペースを盛り込みたいという要望が多くなっています。この傾向はコロナ後の時代においても、働き方改革の主流になっていくと思われます。
さて、現在の日本の住宅は、LDK+nB(リビング・ダイニング・キッチン+家族数に応じた個室)が基本形として定着しています。これに在宅ワークスペースが加わることになります。これまでも書斎がある家はありましたが、本テーマの在宅ワークスペースとは意味が異なります。職場の一部となる個人スペースが家の中に入り込むことであり、会社員である家族が家で過ごす時間が長くなり、仕事をしている親の表情や振る舞いが家の中に存在することになります。
ここからは考えるヒントになりますが、ライフスタイルが変わるということで、LDK+nB型の発想を見直してみるのも面白いかもしれません。また、空間のつくり方として、庭やリビング・ダイニングとの関係、吹抜のとり方、さらに街との関係など、次々とイメージを膨らませてください。
ただし、アイディアを競い合うコンペですから、平面図のある部分に在宅ワークスペースを入れて描いてみましたという案では、多数の応募案の中に埋没してしまいます。入選を目指すには、テーマに対して深く考察されていること、新しい発想が入っていること、提案のポイントが明快で魅力的であること、優れたプレゼンテーションであることが重要です。
また、住宅として当然必要な下記の項目に対する提案も考慮に入れてください。

  1. 北陸の地域特性を活かした住まい
  2. 心豊かで健康な住まい
  3. 地域や街の景観・安心・快適への貢献

審査員

審査員長 蜂谷 俊雄(金沢工業大学教授)
審査員 竹内 申一(金沢工業大学教授)
濱田 修(濱田修建築研究所)
西本 雅人(福井大学講師)
他オダケホーム(株)より2名

(敬称略)

審査及び表彰

審査

部門別に行います

  1. 高校の部(高専1~3年含む)
  2. 短大・専門学校の部(高専4~5年含む)
  3. 大学・大学院の部(専攻科含む)

表彰

最優秀賞 1点(部門を問わず) 賞金15万円
特別賞 オダケホーム賞 各1点(部門を問わず) 賞金8万円
北日本新聞社賞 各1点(部門を問わず) 賞金7万円
北國新聞社賞
福井新聞社賞
優秀賞 各部門2点まで 賞金5万円

※高校の部の賞金については、建築科・建築クラブの取り組みとして先生方にも熱心にご指導いただいており、賞金の半額を記念品として学校へ贈呈いたします。

「第28回北陸の家づくり設計コンペ」審査結果

オダケホームが主催する「第28回北陸の家づくり設計コンペ」の審査が2022年9月に行われ、3部門、計11点の入賞作品と7点の佳作と1点の奨励賞が決定しました。今年度の応募総数は140点。たくさんのご応募ありがとうございました。

審査員総評 

今回のテーマは「在宅ワーク」でした。新型コロナウィルス感染防止対策として「在宅ワーク」という働き方が一般化し、大学においてはオンライン授業という形式が生まれました。このような変化が生まれて2年以上が経過し、新たな状況に対する対応策や発展的な提案が語られる状況になりました。そこで、建築設計を志すみなさんが、この状況変化に対して何らかの建築的提案ができる時期が来ているのではないかと考えました。テーマ解説文にありますように、「職場の一部となる個人スペースが家の中に入り込むことであり、会社員である家族が家で過ごす時間が長くなり、仕事をしている親の表情や振る舞いが家の中に存在する」ことになります。この現実を独自の視点で考察し、イメージを膨らませ、これまでの家とは異なる住居形式や空間イメージが描き出されることを期待していました。
応募作品の多くが、コンペということで普通の家にはない特徴を描こうと努力していることはわかりました。しかし、「在宅ワーク」というテーマを深く掘り下げた内容になっていない案が多かったように思います。コンペのテーマに答えていないように見える作品は、これまでの別テーマの時にもよくありました。つまり、別のテーマであっても応募できそうな特徴ある住宅シーンを描くことで終わっている案です。この現象が今回は特に顕著でした。1次審査を通過した作品の傾向として、平面的・断面的に家の中を動き回ることができ、外との関係も含めて開放的な居場所を所々につくり、その時の気分でワークスペースを選べるという案が多かったように思います。在宅ワークスペースをクローズした特定の場所に限定しないという基本姿勢です。しかし、ここから更に掘り下げて考えないと「開放的な家の所々に休憩場所のある家」というテーマにも見えます。仕事場が住居の中に入ってくることを深く考えた提案が乏しかったように感じます。この場所で会社の上司やお客さんと電話をし、TV会議に参加することもあります。また、仕事に必要な物を収納する家具もあります。さらに、家のお父さんの顔と会社の部長の顔が同一の場所で瞬時に変わる場所でもあります。
コンペでは多数の応募案の中に埋没しないように、独自の考察や論理の展開を試み、審査員が詳しく見れば見るほど「よく考えてある」と思える内容が含まれていなければなりません。「よく考えてある」とは、今回の課題ではどのようなことを意味するか。例えば上位入選案では、「公私が入り乱れる暮らしの中に、仕舞うという振る舞いに着目して住居形式を提案」したもの。「育児をしながら在宅ワークをする母親が家全体を見渡しながら働ける平面計画を提案」したもの。「仕事も含めて家族全員が様々な作業を行う仕事の仲間と考え、家の中を巡る連続卓で表現した案」などがありました。入選作として掲載されている図面と審査講評をよく見てください。同じようなテーマ設定で応募したにもかかわらず、残念ながら落選となった場合は、入選案との違いが何であったかを探ってください。それが理解できた時に何かが学べ、次への挑戦意欲が湧いてくるものです。

審査員長
金沢工業大学教授 蜂谷 俊雄

入賞者発表

第28回北陸の家づくり設計コンペに入賞された皆様、誠におめでとうございます!各作品の審査員先生の講評を公開しました!
ご応募頂いた皆様には、第28回北陸の家づくり設計コンペの記録・「作品集」をプレゼント!10月22日の表彰式後、順次郵送となります。もうしばらくお待ちください✋

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最優秀賞

最優秀賞作品

仕舞事しまいごとができる家』

加藤 穂高 福井大学大学院1年

—作品総評—

「しごと」は元来「すべきこと」を意味し、子供の遊びや勉強、食事を作って食べることも「しごと」と解釈出来る。そう考えると、家の中央を貫くように配置された「仕舞事」の空間は、様々な「しごと」を内包する家族の拠りどころのような存在と言えるだろう。「仕舞う」ことを通して仕事・生活・空間のフレキシブルな関係を構築しようとする提案であるが、「しごと」を生活の振舞いと等価に扱う批評的な視点に可能性と魅力を感じた。

特別賞

オダケホーム賞

たんぽぽ賞(オダケホーム賞)作品

『着替える母のための家』育児と仕事を両立できるコロナ以降の暮しの在り方

宮西 夏里武 信州大学大学院2年
田中 優衣  信州大学大学院2年

—作品総評—

在宅ワークの普及による一番の変化は家事への関わり方ではないか、前は仕事に行く前や後にまとめていた家事を勤務中の休憩中にできるようになった。多くの作品が仕事部屋を用意して「オンーオフ」の切り替えを狙ったのに対して、この作昴では仕事と家事は切り離せないものとして中心に母の空間が据えられている。常に働き続ける母の気持ちを代弁するような素晴らしい作品であるが、最優秀賞との差は建築的な手法の提案が弱かったこと…。3年連続で受賞した二人の実力は確かであるのでさらなる飛擢が楽しみである。

北日本新聞社賞

北日本新聞社賞作品

『小さな家』

岡本 一希 広島大学4年
大呂 直樹 広島大学大学院1年
井上 龍也 広島大学大学院1年

—作品総評—

居住空間をあえて小さくすることで家族関係をより濃密なものとし、家族間の配慮によって在宅ワークを生活の一部として許容させようとする提案である。また、小ささが生み出す余剰空間によって、地域とのつながりを生み出すことも意図されている。寒冷地における半屋外空間の設えに疑問は残るが、在宅ワークという状況が生活に与える変化を考察し、家族関係や生活の在りよう、地域とのつながりまでを再考しようとする姿勢に好感を持った。

北國新聞社賞

北國新聞社賞作品

『生彩で満ちるゆとり』

西尾 依歩紀 金沢工業大学4年

—作品総評—

生活を楽しむためにはゆとりがないといけない、ではゆとりを作り出すためにどうするか。この住宅では隙間がゆとりであり、北陸地方でよく見られる風除室やサンルームから着想を得ていることが面白い。ポリカ-ボネートで囲われた住宅はあたかも北陸版コートハウスのようでもある。独立した在宅ワークの場所(離れ)はデッキや土間を通じて拡張でき、「作業に疲れたら一息つきにおいでよ』と語りかけてくるような優しいプランである。惜しくは外構の表現が薄く、ゆとりが外部へ及んだ際の効果が想像できなかったことである。

福井新聞社賞

福井新聞社賞作品

『ひとつ卓の暮らし』卓がひとつながりになることで家族をつなぐ家

川畑 奨太 福井大学4年

—作品総評—

この案は家事や勉強、遊びも含めて家族内の仕事と捉え、家が1つの企業体のように考えていることが面白い。さしずめ父は営業部、母は総務部、子供たちは新人社員で研修部員といったところであろう。そして各部署間の風通しをよくするために、机を繋げて会社の一体感も高めており、仕事を家に持ち込む在宅ワークではなく、家を家族全員の役割で支えている感じが強く表れていることが評価でき る。一体の机がインテリアデザインだけに留まらず、構造システムも含めて建築形態を司っていればもっと良くなったと思う。

優秀賞

大学・大学院の部(専攻科含む)

優秀賞作品

『屋根は浮かび 広場をつくる』

田畑 快人 東京都立大学4年
国本 春樹 東京都立大学3年

—作品総評—

北陸の厳しい気候に対応するために屋根下に半外部の広場を設けた案である。この作品を評価した点はこの広場以外に敷地設定にもあった。敷地は東西を山間に挟まれた集落地に設定されている。象徴的に描かれた断面図は「在宅ワークは通勤からの解放でもあり、それならば街の中にわざわざ家を建てなくても最高の自然環境の中で働こう」というライフスタイルに対するメッセージでもある。疑問だったのは川辺に向けて広場を閉じたことであり、周囲の自然の恵みを活かしきれていないのではないか。

優秀賞作品

積み家つみいえ

宮澤 周平福井大学大学院1年

—作品総評—

この案は市街地内狭小地に建つ家を想定しており、共用部とコミュニティースペース付き個室を1層にして構成させている。それぞれの在宅ワークは、個室内やコミュニティースペースで行うなど、その時々で選択できる。まるで高層型コワーキングのような家である。各個室は吹抜けを介して繋がっているため、高層住宅でも各階の気配は十分に感じられ、楽しい生活を想像させられる。ただ、この「積み家」は階段移動が前提の楽しさなので、健常者にとっても生活は厳しいのではないかと疑問が残る。

短大・専門学校の部(高専4〜5年含む)

優秀賞作品

『operability スマホのような操作性を備えた住空間』

長瀬 琉空 石川工業高等専門学校5年
松田 彩  石川工業高等専門学校5年
池 菜摘  石川工業高等専門学校5年
竹 祐誠  石川工業高等専門学校5年

—作品総評—

この案は開口が低い垂れ壁と高めの腰壁により、視線を遮り、視界のみを共有させたもので、オープンスペースの解放感を保ちつつ、個室のプライバシーも確保する、提案型の住宅である。低い開口をくぐりながら移動させられる荒技には幾分難があると思うが、スマホの画面転換する様を建築計画に持ち込む発想は面白くて意欲を感じる。ただ、特徴的な敷地を設定しながら、その敷地に対応していないことが悔やまれる。

優秀賞作品

『着替える町屋 filterを操る家 filterが操る暮らし』

金田 悠花 石川工業高等専門学校4年
蟹谷 匠  石川工業高等専門学校4年
齊藤 千紗 石川工業高等専門学校4年
ERDENEDALAI LKHAGVAMURUN  石川工業高等専門学校4年

—作品総評—

ひがし茶屋街にある町屋での在宅ワークを提案した案である。在宅ワークの隣にある土間は他人に貸し出すことができるコワーキングスペースとしての活用も意図されている。この活用は外出時に限定しているが、曜日ごとに近隣同士で在宅ワークの場所を提供し合うこともできそうである。貸し出した際は「filter」と名付けられた上下に移動する建具で仕切られる。平面上の可動方式としなかったのは町屋ゆえの狭さに配慮したのだろう。建築的な仕掛けの面白さがある一方で在宅ワークの楽しさを十分に描けていないことが惜しい点である。

高校の部(高専1~3年を含む)

優秀賞作品

『卓に住まう』

後藤 凜羽 富山工業高等学校3年
松本 璃子 富山工業高等学校3年

—作品総評—

この案は大きな机のまわりに2階建ての構造コアを個室として配置することにより、コミュニティー空間とプライベート空間の微妙なバランスを維持している秀作である。雲形の大テーブルで仕切られた生活空間にはそれぞれにエントランスを設けてあり、居問や食堂などへ出掛ける行為が生まれて職住一体の中で頭の切り替えが可能になると思う。また図書コーナーを地域へ開放することが可能になり評価できる。ただ、内外の境界をガラスだけに頼らずに、きちんと細部を検討することが、住宅地内に建つ住宅として必要だと思う。

優秀賞作品

『Crossover House』

清水 楓太 富山工業高等学校2年
坂口 寛太 富山工業高等学校2年
吉永 煌  富山工業高等学校2年

—作品総評—

単純なグリッドによる平面計画の中に、動線計画や外部空間の配置のエ夫によって様々なシーンが展開している。壁の交点には多角形の机が挿入されており、空間や家族のふるまいの共有が図られている。この家に暮らす家族は、家族との距離を選びながら、思い思いに居場所を見つけて時を過ごすことだろう。単純さの中に多様さを内包し、距離をデザインしていること。高校生の提案とは思えない、とても抽象度の高い魅力的な作品である。

佳作

佳作

『日常のルポルタージュ』

安田 壮馬 福井大学大学院1年

佳作

『町のリノベプロジェクト』

林 優樹 金沢工業大学4年

佳作

『「ナカニワ」に囲まれ、「ハナレ」に住まう。』

水上 翔斗 東京理科大学4年

佳作

『開けて、広げて、つなぐ家。 ~広がるOREDOユニットビュー~』

林 拳士朗 金沢科学技術大学校2年

佳作

『ゆらぎ —予想を裏切る変化のある暮らし—』

片山 海陽 石川工業高等専門学校4年
山田 響  石川工業高等専門学校4年

佳作

『視点を変える家』

長 大治郎 金沢市立工業高等学校3年

佳作

『切り替えの家 ~暮らしと社会・ネットと自然~』

林 智央 福井工業高等専門学校3年

奨励賞

佳作

『水、自然とともにある生活』

桑谷 珠代 富山クリエイティブ専門学校2年

※奨励賞…学校ごと(短大・専門学校の部・高校の部)に10点以上の応募があり、その中から1点以上の作品を表彰

今後のスケジュール 【表彰式・プレゼンテーション】

日時 2022年10月22日(土) 15:00~17:30
会場 富山県民小劇場オルビス(マリエとやま7F)
住所:富山市桜町1丁目1番61号(JR富山駅前横)
TEL 076-445-4531

表彰式・作品発表会

このコンペでは、住宅設計を目指す学生さん達の成長の機会として、入賞者本人によるプレゼンテーションや、審査員、応募者も参加してのディスカッションを行っています。互いにコンセプト、工夫やこだわりを存分に発表し、これからの北陸の家づくりについて、語り一緒に考える良い機会となることを期待しています。
このコンペが、設計者を目指す学生にとっての登竜門となり、又、地域の皆様と共に、北陸が培った住文化とこれからの家づくりについて考える契機になることを願っています。

作品展開催 10/26~1/23

◎表彰式・プレゼンテーションの後、最優秀賞、特別賞、優秀賞の作品展示を各会場で以下の日程にて巡回いたします。

福井大学 福井市文京3丁目9-1 10/26(水)~11/1(火)
福井工業大学 福井市学園3丁目6-1 11/2(水)~11/8(火)
金沢工業大学 野々市市扇が丘7-1 11/14(月)~11/20(日)
金沢科学技術大学校 金沢市三社町11-16 11/25(金)~12/1(木)
富山大学 高岡キャンパス 高岡市二上町180番地 12/2(金)~12/8(木)
日本海ガス プレーゴ 富山市黒崎405-6 12/12(月)~12/18(日)
富山新聞社 高岡会館 高岡市広小路1-15 1/10(火)~ 1/16(月)
北日本新聞社カルチャーパーク高岡(まなぶん) 高岡市御旅屋町101(御旅屋セリオ6階) 1/16(月)~ 1/23(月)

※各学校での作品展は、新型コロナウイルス感染対策のため、校内学生のみ見学可となります。

※その他、オダケホーム常設展示場にて作品展示予定。

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