第11回北陸の家づくり設計コンペ
「第11回北陸の家づくり設計コンペ」概要
テーマ:安心・安全の家
戦前までの住宅は、近所の人達や子供達が縁側や土間に気軽に入り込んでコミュニケーションしていました。このように開かれた住まいであったのも、地域社会全体が安心・安全だったからでしょうか。戦後都市化が進行し、プライバシーが重視され、干渉されない生活が望まれるようになって、鍵がかけられ、カーテンやブラインドで遮られて、生活が見えなくなる閉じた家が主流になりました。近年は、泥棒だけではなく、凶悪な犯罪も増える一方、家族がばらばらとなる家庭崩壊も増加してきました。その結果、二重錠やセキュリティーを重視した住宅や近所づきあいのない住宅地が多くなりました。このような状況に対して、安心・安全な地域社会をつくり、安心・安全な家庭生活をするにはどのような住宅をつくればよいのでしょうか。斬新な提案を期待します。
また、住宅として当然必要な下記の項目に対する提案も盛り込んでください。
- 家族の絆を育む住まい
- 北陸の地域個性を活かした心豊かで快適な住まい
- 長期経済性のある住まい
- 地域との調和、地球環境との共生の住まい
審査及び表彰
審査
部門別に行います
- 高校の部(高専1~3年含む)
- 短大・専門学校の部
- 大学・大学院の部(高専4~5年含む)
表彰
最優秀賞 | 1点(部門を問わず) | 賞金10万円 | |
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優秀賞 | 各部門2点まで | 賞金5万円 | |
特別賞 | 北日本新聞社賞 | 各1点(部門を問わず) | 賞金5万円 |
北國新聞社賞 | |||
たんぽぽ賞(オダケホーム賞) |
※高校の部については、建築科、建築クラブの取り組みとして先生方にも熱心にご指導頂いており、賞金の半額を記念品として学校へ贈呈します。
審査員
審査員長 | 水野 一郎(金沢工業大学教授) |
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審査員 |
稲葉 実(三四五建築研究所所長) 福井 宇洋(福井大学工学部助手) 他オダケホーム(株)より2名 |
(敬称略)
「第11回北陸の家づくり設計コンペ」結果
オダケホームが主催する「第11回北陸の家づくり設計コンペ」の審査が平成17年9月に行なわれ、3部門、計10点の入賞作品が決定しました。今年度の応募総数は139点。
表彰式・作品発表会
日時 | 10月22日(土)15:00~17:30 |
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会場 | 富山県民小劇場オルビス(マリエとやま7F) TEL076-445-4531 住所:富山市桜町1丁目1番61号(JR富山駅前横) |
このコンペでは、建築を学ぶ学生が自分の作品を発表したり、テーマについて論議する機会が少ないことから、入賞者本人によるプレゼンテーションや、応募者、また当社設計士もが参加してのディスカッションを行っています。互いにコンセプト、工夫やこだわりを存分に発表し、これからの北陸の家づくりについて、語り一緒に考えるよい機会となることを期待しています。
このコンペが、設計者を目指す学生にとっての登竜門となり、又、地域の皆様と共に、北陸が培った住文化とこれからの家づくりについて考える契機になることを願っています。
総評
「安心・安全の家」は住宅地でのさまざまな犯罪やいがみ合い、住宅内での閉じこもりなどの多発ゆえに解決を急がねばならないテーマであることは誰もが感じていることです。しかし、「住宅」というハードウェアからの解決への提案は大変難しいことであり、苦労したことと思います。
それでも全体で139作品もの応募があり、社会を観察し、住宅地を歩き回り、住まいの「うち・そと」を見回すことから生まれたさまざまな提案を見ることができました。
共通している内容は、鍵をいくつもつけたり、格子をはめたり、塀で囲んだり、セキュリティー会社と契約したりが「安心・安全の家」ではなく、家庭内、ご近所、地域に良好なコミュニケーションが生まれるような住まいづくりが有効であろうという認識でした。
住宅内部では堅固な個室主義ではなく、子供共通のプレイルームや学習室があり、居間を全ての部屋に行く動線の中心とするなど、家族が常にゆるく触れ合い、お互いを尊重しあうことから安心・安全の人間関係が始まるとの提案が多くありました。 住まいとご近所や地域の関係についても数多くの提案がありましたが、概ね3つに分類できそうです。
- 前面道路に向けて、玄関、窓、縁側、テラスを設け、プライバシーを保ちながら、家の中から街の気配を、街から家の中の気配を感じられるようにすること
- 前庭、ポーチ、ピロティ、ウッドデッキといった外部空間、あるいは玄関ホール、土間といった内部空間に街の人々も気軽に入ってきて会話やお茶やあそびなどの日常的営みを起こさせ、心の通い合う顔見知りのご近所関係を育てること
- 住宅の一部を街の人々へパブリックスペースとして提供し、地域コミュニティーの協働空間とすること。例えばリサイクルボランティアの基地、子供図書塾、高齢者お達者クラブ、無農薬家庭菜園などを持つ住まいをつくる
これら3つのプログラムは開いた家づくりの開き方の3段階とも言えます。
日本の戦後住宅は確かに一人一人のプライバシーを保証する個人主義や他人に干渉されない自由を守るために閉じた部屋、閉鎖的な家をめざしてきました。それが一方で孤独の部屋、つきあいのないご近所となって、安心・安全を脅かすことになったと考え、今回、もう一度新しい開いた家を求めたと思えます。これらの提案を少しずつ実現させ、効果を確認しながら、安心・安全で快適な住宅・住宅地を築いてゆくことが、日本人の生活にとって必要不可欠なことでしょう。
終りに多数の労作を応募いただいた皆様に感謝申し上げますと共に、次回テーマ「景観を育む家」(仮称)への参画を強く希望いたします。
審査員長 金沢工業大学 教授 水野一郎
審査結果
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最優秀賞(全体の中で1点)
特別賞
優秀賞
大学・大学院の部(高専4~5年を含む)
短大・専門の部
高校の部(高専1~3年を含む)
(敬称略)