HOME > 北陸の家づくり設計コンペ > 第29回北陸の家づくり設計コンペ

テーマ:つなぐ家

私たちはたくさんのつながりの中に生きています。人間という言葉は「人」と「間」の二文字で構成されていますが、そこには私たちがホモサピエンスとしての「ヒト」であるのと同時に、「ヒト」と「ヒト」の関係の中の存在であることが示されています。人間が生態系という自然のつながりの中の一要素であることも思い起こされます。また、大震災などの自然災害による喪失や、パンデミックによる隔絶の経験から見えてくるのも、私たちがいかにつながりによって支えられ、生かされているかということです。
今回のテーマは「つなぐ家」です。皆さんが普段生活している日常の中にあるつながりや、社会や世界を構成する大きなつながり、現代において失われてしまったつながりなどについてじっくり考えてみて下さい。家族のつながり、家と地域とのつながり、人と自然とのつながり、記憶や歴史とのつながりなど、いくつものつながりを思い描くことが出来るはずです。つなぐ対象も、人、建築、まち、自然、風土、文化、時間など様々に考えられるでしょう。2つの要素をつなぐこともあれば、複数の要素を多様につなぐこともあると思います。つなぐ要素によっては、このコンペの主旨である「北陸における」家づくりというテーマにぴったり重なるかも知れません。
コンペだからと言って奇抜なアイディアが良いとは限りません。むしろ、皆さんが本心からこうなって欲しいと考える切実さが、提案に強さと説得力を与えてくれるのではないでしょうか。また、皆さんが自身の提案をどのように表現するかも重要です。「何を」「なぜ」つなごうと考えたのか?そして「どのように」つなごうとしているのか?根拠と方法を明快に提示して欲しいと思います。
皆さんが何をつなごうとするのか、そしてどんなつながりを持った魅力的な家が提案されるのかとても楽しみです。
また、住宅として当然必要な下記の項目に対する提案も考慮に入れてください。

  1. 北陸の地域特性を活かした住まい
  2. 心豊かで健康な住まい
  3. 地域や街の景観・安心・快適への貢献

審査員

審査員長 竹内 申一(金沢工業大学教授)
審査員 濱田 修(濱田修建築研究所)
西本 雅人(福井大学准教授)
他オダケホーム(株)より2名

(敬称略)

審査及び表彰

審査

部門別に行います

  1. 高校の部(高専1~3年含む)
  2. 短大・専門学校の部(高専4~5年含む)
  3. 大学・大学院の部(専攻科含む)

表彰

最優秀賞 1点(部門を問わず)賞金15万円
オダケホーム賞 各1点(部門を問わず)賞金8万円
特別賞 北日本新聞社賞
北國新聞社賞
福井新聞社賞
各1点(部門を問わず)賞金7万円
優秀賞 各部門2点まで 賞金5万円
佳作 各部門3点まで

※高校の部の賞金については、建築科・建築クラブの取り組みとして先生方にも熱心にご指導いただいており、賞金の半額を記念品として学校へ贈呈いたします。

「第29回北陸の家づくり設計コンペ」審査結果

オダケホームが主催する「第29回北陸の家づくり設計コンペ」の審査が2023年9月に行われ、3部門、計11点の入賞作品と9点の佳作と1点の奨励賞が決定しました。今年度の応募総数は159点。たくさんのご応募ありがとうございます。
受賞されました皆様には、10/28の表彰式・プレゼンテーションのご案内をメール(大学・大学院の皆様)・郵送(短大・専門、高校の皆様学校宛)にてお送りしますので、ご確認のほどお願いいたします。※10/2PMから、ご案内メール・郵送いたします
また当コンペでは、佳作・奨励賞を受賞された皆様に上位受賞へステップアップするために審査講評を個別で送らせて頂きました。ぜひご確認ください。
また10/28の表彰式・プレゼンテーション終了後日からは、応募者全員に「第29回北陸の家づくり設計コンペ」の作品集を郵送いたします。各大学・新聞社では受賞作品を展示もいたしますので、下記スケジュールをご覧ください。

審査員総評 

 今回は、昨年までと比べて抽象的なテーマ「つなぐ家」としました。学生の皆さんが、与えられたテーマを幅広い視点から独自に解釈し、個性あふれる提案をしてほしいと考えたからです。抽象的なテーマとすることで皆さんが応募することを躊躇してしまうのではないか?という不安もありましたが、結果としては多くの応募があり、期待通り「つなぐ」というキーワードを様々な角度から捉えた多様な作品が集まりました。
 審査の過程では、「何をつなごうとしているのか?」また「どのようにつなごうとしているのか?」を軸に、審査員の間で活発な議論がなされました。今年から高校の部以外は事前にデータを提出してもらい、皆さんの提案内容を各審査委員が事前に把握していたため、審査に十分な時間をかけることが出来ました。
 つなぐ対象としては、家族、地域、自然、文化、時間(歴史)、生業、技術など多岐にわたりました。これだけ多様な要素を見出せるということに、北陸という地域のポテンシャルの高さが表れていると思います。審査の過程では、家族という限定された対象に留まるのではなく、地域や自然、文化や時間など、広がりを持ったつながりを対象とした作品や、複数のつながりを併せ持った作品が高い評価を受けました。それは、建築が時間や敷地という枠組みを超えた価値を持ってほしいという審査員の想いの現れだったのではないでしょうか。
 つなぐ手法としては、地域性を深く読み取り、その場所だからこその方法を提示している作品が評価されました。それは、建築が特定の場所に建つ「そこにしかない存在」であり、その場所や地域の文脈と関係づけられるべきものであるからに他なりません。文脈を継承する場合もあれば、文脈とあえて対立させる場合もあるでしょう。いずれにしても文脈を読み解き、建築の在り方やかたちに根拠を与えることが重要だと思います。評価された作品は、そうした点において説得力を持ちえた提案であったと言えます。
 最後に最優秀案が選ばれた要因について話しておきたいと思います。上記に書いたような評価軸はもちろんのことですが、提案の全てがすんなり理解できてしまうのではなく、提案を通して審査員に問いかけてくる謎めいた部分を持ち合わせていたからだと私は分析しています。個別の講評では「詩的」という表現をしましたが、様々な解釈を促すイメージの拡がりを持った提案であったと言っても良いでしょう。そうした視点で全体を眺めてみると、各賞を受賞した作品を含めてすんなり理解でき過ぎてしまう優等生的な提案が多かったように思われます。コンペでは与えられたテーマに対して明快な提案を行うことも重要ですが、議論を巻き起こすような問いを持つことも重要です。このコンペは次回で30回の節目を迎えます。今後皆さんからたくさんの問いを投げかけてもらい、議論を重ねてゆくことで「北陸の家づくり」というコンペの意義を深めてゆければと思います。

審査員長
金沢工業大学教授 竹内 申一

入賞者発表

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最優秀賞

最優秀賞作品

『swimming the urban poolhouse あらや荘に泳ぐと』

安田 壮馬 福井大学大学院2年

—作品総評—

この提案の魅力は、未完結さと余剰性である。2つの敷地に分けて建てられていることや、はっきり用途が決まっていないプールルームと呼ばれる大きな空間の存在。住み手は、2つの建物を行き来しながら、謎めいた家の存在や空間の使い方、周辺の環境や自然について様々に想いを巡らせながら生活することだろう。そうした日常の発見と気づきの連続が、人や地域、自然や環境を多様につないでくれるのではないだろうか。イメージの拡がりを持った詩的な作品である。(竹内)

特別賞

オダケホーム賞

たんぽぽ賞(オダケホーム賞)作品

『よるまっし -小さなヨバレに集う家-』

山本 雄理 金沢工業大学大学院1年
笹木 莉菜 金沢工業大学大学院1年

—作品総評—

能登地方の祭事における「ヨバレ」の風習に着眼して、人々のコミュニティーを日常へ広げる提案である。飲食がメインの「ヨバレ」を家族の生活行動に結びつけて人を呼び入れる発想は面白い。個室周辺に縁側や土間を設けて、動線自体が生活空間になっており、それが人の集いやすさと行為相互に死角が生まれて微妙な距離感を与えている。「ヨバレ」の日常化が上手く行われていて、人々が自然な形で繋がっていると思う。(濱田)

北日本新聞社賞

北日本新聞社賞作品

『多徳を生む家』

古田 崚馬 横浜国立大学大学院2年
馬鳥 智貴 横浜国立大学大学院2年

—作品総評—

富山県砺波平野に広がる屋敷林(カイニョ)、それは暮らしに多面的な恩恵をもたらしてきた。その恩恵が「多徳」である。この提案ではかつてのカイニョを保存するのではなく、現代の社会に必要な多徳を生み出す家を提案した。提案に至るまでの論理は説得力があり、パースに頼らないドローイングの描写は美しかった。あえて指摘するならば、「講」の場や蔀戸、土間など伝統的な技術や場を再構成しただけのようにも見え、それが現代の多徳につながるのか、最新の建築技術を取り入れることもあり得たのではないかとも思われた。(西本)

北國新聞社賞

北國新聞社賞作品

『まちの樹 記憶と場所をつなぐ集落のランドマーク』

吉田 充希 徳島大学3年・とくしま建築学生スタジオ

—作品総評—

低層で開放的な案が多い中で稀有な高層案である。手取川に近いことより、地域が抱えている水害対策に対して、人々の避難と記憶をコンセプトに構成していることに特異性を感じた。一見閉鎖的に見える3棟で囲まれた空間は、1階はピロティ―とピアノ教室を設けていることで、ミニコンサートが行えるような開放的な空間であり、日ごろ人々が集うことが出来る。人が集うからこそ、この住宅は記憶にすりこまれて災害時には逃げ込む発想が起こるのだと思われて、異質な造形もランドマークとして記憶に残ることに繋がっている。(濱田)

福井新聞社賞

福井新聞社賞作品

『「だ 円」の紡ぐ生活 -血縁・地縁を更新し次世代につなぐ新しい家-』

前田 侑香    京都工芸繊維大学3年
金子 豪太    京都工芸繊維大学大学院1年
近藤 誠之介 京都工芸繊維大学大学院1年
矢野 絢子    京都工芸繊維大学3年

—作品総評—

個人的な印象だが北陸の中でも福井は親の敷地内に新しく家を建てて三世代で住居を構えることが多い。そんな住宅の住み移りをテーマとするこの作品は、世代をつなぐためにだ円を用いた。だ円というインパクトのある形が印象的であるが、この作品の本質は、初めは親と子のつながりであったものが親の死別とともにゲストハウスに改修することで家と地域のつながりに変わっていくという、つながりが移り変わっていくことにある。だ円はその循環を示す象徴であり、一方でプランを難しくさせた「困ったさん」でもあった。(西本)

優秀賞

大学・大学院の部(専攻科含む)

優秀賞作品

『見習いつなぐ 伝統工芸職人の住宅』

西村 美里 工学院大学4年
佐藤 慧    工学院大学4年
幅 亜加里 工学院大学4年

—作品総評—

審査を務めて7年目になるが、血縁ではない師匠と弟子の家の提案は初めて見たと思う。住み込みで働きながら伝統工芸の技術を師から弟子へとつないでいく、そのストイックな家族設定に妙に惹きつけられた。職住一体の空間として「見習い」による伝承を行うために住居部分と工房部分が市松模様のように配置されている。職住を隔てるために中廊下が加えられ、そこが交流の場にもなっている。気になった点を挙げると、伝統工芸の制作手順なども考慮されていると伺えるが、少し工房が狭いのではないかと思われた。(西本)

優秀賞作品

『雪すかし 家すかし』

吉田 周和 東京理科大学大学院1年
佐古 統哉 東京理科大学4年

—作品総評—

北陸の気候と文化を活かし、夏季のエネルギー負荷を下げることと、冬季の習慣である「雪すかし」により人々の繋がりも創出しており、伝統的な雪室をコンセプトに据えていることは、北陸の家づくりコンペとして評価できる。ただ、貯雪量の少ないことと造形の希薄さが残念で、伝統的雪室の構造と造形をより設計に取り入れて行けば風土にそった精神的な繋がりを持った住宅になったと思う。(濱田)

短大・専門学校の部(高専4〜5年含む)

優秀賞作品

『個育ての家 ~個から繋がる地域との暮らし~』

竹野 敦人 金沢科学技術大学校2年

—作品総評—

地域との繋がりを個人主体に考えて、出入口を個室ごとに設けている。これは山本理顕氏が、共同住宅で提唱するコモンスペースの住宅への引用といえる。個と地域のコミュニティーは直接的に行われるため、「個育て」をテーマにしていることより、自立心の育成には良いと思われる。ただ、個室とコモンスペースとの仕切りが無く一体的にしていて、家族間の繋がりは生まれるものの、出入口の多いワンルーム住宅になっていることが残念で、プライバシーを保った上で繋がりを考えることが必要である。(濱田)

優秀賞作品

『生きると生きる -死にゆく街が生き還ってゆく暮らし-』

藤部 太誠 金沢科学技術大学校2年

—作品総評—

人以外の生態系とのつながりを提案する家である。人や景観のつながりを提案する作品が多い中で、私たちの生活を超えた世界観のテーマは強く印象に残るものであった。虫や動物とどうつながって生きていくのか、考えるほど深いテーマだと思う。惜しむべき点は茶系で統一されたパースの色合いは全体的にのっぺりとしていて雰囲気が暗い印象になっていたので、家が朽ちていくプロセスだからこそ前向きになる明るい表現でも良かった気もする。(西本)

高校の部(高専1~3年を含む)

優秀賞作品

『家びらき、街つなぎ』

淺岡 寛菜 富山工業高等学校3年

—作品総評—

正形の壁をずらすことで、隙間を開けて地域との繋がりを創出するものである。塀や壁が方向性から解放され、いろいろな角度から外部と繋がり、内部からは周辺を切取られる風景を見ながら楽しく生活できる。そして、そのことが屋根に波及されて切取られた空も空間に変化を与えていて面白い。複雑な造形を上手くプレゼンテーションしていて、楽しさも含めて評価した。屋根部分の内外の仕切りが曖昧で、現実的な表現が出来ればより良くなると思う。(濱田)

優秀賞作品

『世代を結ぶ、共生の家』

名田 纏 高岡工芸高等学校2年

—作品総評—

富山県黒部市生地(いくじ)の地域に建つ家である。この地域の特徴でもある豊富な地下水から湧き出る清水、あいの風の通り抜けを考慮した形態の屋根、これらの地域の資源を活かした空間によって人と人をつなぐことを提案している。一見すると奇抜な形態であるが、しっかりと地域をリサーチした上で若い感性らしい思い切りの良い提案をしていることが評価された。住宅の中心に据えられた清水が各部屋ともつながるように計画されるともっと評価されたと思われる。(西本)

佳作

佳作

『塀をはさんで』

長谷川 昂大 福井大学3年

佳作

『はんぶん ぐらし』

青山 悠人 名古屋大学大学院1年

佳作

『付属建築物でつないで住まいを実現(見捨てられた敷地の有効利用の提案)』

林 遥       富山国際大学3年
朝野 峻平 富山国際大学3年
小林 大翼 富山国際大学3年
數土 裕清 富山国際大学3年
髙森 美奈 富山国際大学3年
宅美 博史 富山国際大学3年

佳作

『天気の家 ~天気とともに変化するくらし~』

北室 葉那子 石川工業高等専門学校4年

佳作

『格子壁が家族をつなぐ 隣地境界から地域とつながる』

岩田 英華 石川工業高等専門学校5年
窪田多久見 福井工業高等専門学校5年

佳作

『縁が輪』

向 悠吾    石川工業高等専門学校4年
黒川 茉祐 石川工業高等専門学校4年

佳作

『ひとつながりの壁の家』

清水 楓太 富山工業高等学校3年

佳作

『うつりゆく家』

高野 凛夏 石川工業高等専門学校3年
山内 花凛 石川工業高等専門学校3年
諸橋 茉歩 石川工業高等専門学校3年
藤田 暖心 石川工業高等専門学校3年

佳作

『空間パズル』

粟 陽翔 金沢市立工業高等学校3年

奨励賞

佳作

『六属性のアズマダチ』

水木 晴大 富山クリエイティブ専門学校1年

※奨励賞…学校ごと(短大・専門学校の部・高校の部)に10点以上の応募があり、その中から1点以上の作品を表彰

今後のスケジュール 【表彰式・プレゼンテーション】

日時
2023年10月28日(土) 14:00〜17:30  ※例年より開始時間前倒しとなっております
特別賞の皆さんのプレゼンテーションをYouTubeライブにて配信予定です。毎回白熱したプレゼンです。先生方との質疑応答も見ごたえあります。お楽しみに(URLは後日こちらのHPにて貼付ます)
会場 富山県民小劇場オルビス(マリエとやま7F)
住所:富山市桜町1丁目1番61号(JR富山駅前横)
TEL 076-445-4531

表彰式・作品発表会

このコンペでは、住宅設計を目指す学生さん達の成長の機会として、入賞者本人によるプレゼンテーションや、審査員、応募者も参加してのディスカッションを行っています。互いにコンセプト、工夫やこだわりを存分に発表し、これからの北陸の家づくりについて、語り一緒に考える良い機会となることを期待しています。
このコンペが、設計者を目指す学生にとっての登竜門となり、又、地域の皆様と共に、北陸が培った住文化とこれからの家づくりについて考える契機になることを願っています。
※今回から審査員の先生方、学校の先生方、学生さんと作品の講評や質問などができる「交流会」の時間を設けます。

作品展開催 

◎表彰式・プレゼンテーションの後、最優秀賞、特別賞、優秀賞の作品展示を各会場で以下の日程にて巡回いたします。

福井工業大学 福井市学園3丁目6-1 11/1(水)~11/8(水)
福井大学 福井市文京3丁目9-1 11/9(木)~11/16(木)
金沢工業大学 野々市市扇が丘7-1 11/20(月)~11/26(日)
金沢科学技術大学校 金沢市三社町11-16 12/4(月)~12/11(月)
富山大学 高岡キャンパス 高岡市二上町180番地 12/12(火)~12/19(火)
日本海ガス プレーゴ 富山市黒崎405-6 1/9(火)~ 1/16(火)
富山新聞社 高岡支社 高岡市広小路1-15 1/22(月)~ 1/28(日)
北日本新聞社カルチャーパーク高岡(まなぶん) 高岡市御旅屋町101(御旅屋セリオ6階) 1/29(月)~ 2/4(日)

※その他、オダケホーム常設展示場にて作品展示予定。

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