HOME > 北陸の家づくり設計コンペ > 過去受賞者からのコメント

安田壮馬さん

福井大学大学院2年
第29回最優秀賞

「環境を設計すること」
環境は、何かと何かの間に発生します。建築スケールでは、建物と建物の間、建物と敷地境界線の間。建築以下スケールでは、機能と機能の間、机と本棚の間。建築以上スケールでは、都市と都市の間、都市と山の間。私たちはその間に寸法を与えることで設計をしています。
私は設計をするとき、いかに新しい環境を提案できるかを考えています。住宅の場合は、生活行為が外部空間とつながることや、機能を超えて場所が使われることを考えて設計することが多いです。今回の作品も、「住宅を分解すること、そしてその住宅同士をつなぐこと」のアイデアを持ち、分解した住宅同士の間をいかに豊かにするかを考えて設計していました。
そしてどの環境も既存のタイムスケープ=時間軸があります。その既存のタイムスケープに配慮しながら、新しい環境を提案することも重要です。まちの成り立ち、山や木々が持つ時間、流れる川、毎年色をつける稲穂。それぞれ独立したタイムスケープを持っています。それらを受け入れたり、時には感じない様にしたりしながら設計をします。
私自身にも、環境とタイムスケープがあります。現在修士二年で、今年度を以て修了します。6年間福井という環境に身を置いていました。その中で意識していたことは「自分の環境を設計すること」です。常に完璧な状態の環境に身を置ければいいのですが、どの状況でも完璧な状態になることはないと思うのです。だから、自分で自分の環境を設計して行くことがとても重要だと思っています。
コンペに提出すること。仲間を集めて勉強会を開催すること。読書会を開催すること。展覧会を開催すること。多くの建築を見に行くこと。恩師や先生と話すこと。友達と夜中まで語り合うこと。後輩のエスキスをすること。学校のいち課題でも、これまでにない表現で提出すること。これまで多くのことに取り組んできました。「自分の環境を設計すること」とは、二つあると思うのです。自分の今いる環境で求められたものを、常に自分の持つ最大限の力で応答することと、自分のいる環境に満足せず、新しい環境を自分自身でつくっていくこと。前者は受動的設計で、後者は主体的設計です。自分の環境を設計するためにはどちらも等価に重要だと思っています。コンペに提出する理由は人それぞれですが、コンペに提出するということは、その両者を含むのではないでしょうか。
これまで私は、このオダケホームのコンペに計4回応募させていただいていました。初めは大学二年の時で、人生初のコンペでした。最初はコンペにとりあえず取り組んでみたいという理由でしたが、翌年からは毎年夏にこのコンペに取り組むことで、自分の実力や立ち位置を確認したり、自分の表現を確立するための筋トレをしたりしていました。そして北陸という敷地に立ち返り自分自身を見つめ直す機会にもなっていました。
毎年そのような機会を与えてくれるオダケホーム並びに審査員の皆様、関わってくださっている方々には大変感謝しています。
学生の皆さんには、コンペに提出すること、受賞することも大切なのですが、同じ建築について学び考えている学生として今の環境に満足することなく自分の環境を自分で設計していってほしいと思っています。お互い励みましょう。

加藤穂高さん

福井大学大学院1年
第28回最優秀賞

私がこれまでコンペに応募したのは、第26回「窓から広がる魅力ある家」、第27回「土間を活かした新しいライフスタイル」、そして第28回「在宅ワークが楽しい家」の3回で、それぞれ学部3年、学部4年、修士1年の時です。設計に興味を持ち始めた学部3年の時に、大学でポスターを見つけ応募したのがきっかけでした。
第26回では、「窓辺」という空間に着目し、五感を使い、北陸の自然環境と密接に関係しながら生活する家を提案しました。しかし、結果を残すことは出来ず、受賞された作品を見てみると着目した点やアイデアは良かったが、形態的な操作やプレゼンボードの完成度や見せ方など足りない部分が沢山ありました。次の年には卒業設計を控えていることもあり、必ず挑戦して結果を残そうと考えていました。
第27回では、「土間」を再解釈し、いかに半屋外の自然的要素を生活に馴染ませるか、そのために必要な「土間」の在り方はどのようなものかを考え、提案しました。前回の反省を踏まえ、アイデアの膨らませ方や魅力あるプレゼンボードの作り方を1年間研究しながら挑戦しました。当時は自然と融合する建築に興味を持っていたため、プレゼンボードも文字を少なくし、断面、平面、矩計、パースとそれぞれで明快な分かりやすさを重視しました。
第28回では、「在宅ワーク」=「仕事」を、他の家での振る舞いと同様に扱い、それぞれの振る舞いを「仕舞う」ことで、「仕事」が暮らしと溶け合うような暮らしを提案しました。卒業設計を経て、もっと空間の質や形態に力を入れたいと思い挑戦しました。常にアイデアを頭の中で反芻しながら形態のスタディを繰り返し、プレゼンボードにはそれほど拘らず、素直に作品の内容で勝負しました。まだまだ粗削りで完成度は低かったですが、これまでの3年の集大成を結果として出すことが出来たと思っています。
アイデアコンペでは、アイデア勝負の部分が強いと思います。そのアイデアを考えるのにとても悩むと思います。私はアイデアを考える際に、なるべくテーマに拘り過ぎず様々な視点や角度から考えるようにしています。社会的問題などのマクロな視点から、自分が好きな空間の理由などのミクロな視点まで様々な視点をテーマとすり合わせて提案することが、広がりのある提案に繋がると思います。私も今回の結果に甘んじず、広い視点を持てるよう、成長していきたいと思います。
最後になりますが、オダケホームの皆様、審査員の皆様には私の3年間を始め、北陸で学ぶ学生にとって毎年沢山の成長の機会を頂き、心より感謝申し上げます。

山田裕大さん

福井大学大学院1年
第27回最優秀賞

私はオダケホームの主催する北陸の家づくりコンペに今回を含め二回作品を提出したことがあります。一回目は去年の「窓から広がる魅力ある家」です。学校で卒業設計という大きな課題を目前にしている中で、改めて北陸の可能性について自分の知識や考えを見つめなおしアウトプットする良い機会になると考え応募しました。しかし力及ばず、結果は多くの作品の中に埋もれる形で終了しました。受賞している作品を見ると、北陸地域の上手い活かし方やユーモアのあるコンセプト、明快なプレゼンテーション力など自分には考えつかなかったようなアイデアに圧倒されると同時に、魅せ方次第では自分にもチャンスがあったのではないかと悔しい思いをしました。その時の気持ちが忘れられず、卒業設計という大きな課題を乗り越えた自分の実力を試す場として、今回の「土間を活かした新しいライフスタイル」に応募しました。
 今回は土間というシンプルで分かりやすいテーマであったため、とにかく魅力あるプレゼンボードにすることに力を入れ、コンセプトはあまり複雑化せずに住む人、町の人に寄り添った土間の新しい使い方の提案をしました。土間は内と外との中間領域であり、住む人と町の人が混ざり合い様々なことが起こりうる場所になるという考え方がる一方で、住む人同士が同じ時間を共有する場所と考えることもできます。私は住人それぞれに一つずつ土間を作り、それぞれを扉で仕切ることで内と外を自由に切り替えることができ、開いているときと閉じているときで使われ方の違う土間を提案しました。自分ではまだまだ詰めきれなかったという部分もあり完全に納得のできる提案になったとは言えませんが、今回、最優秀賞に選んで頂けたことが大きな自信になったので、反省しつつさらに良い提案をできるようにこれからも成長していきたいと思います。
 改めて、今回最優秀賞というすばらしい賞に選んで頂き誠にありがとうございます。オダケホームの皆様をはじめとする本コンペに関わって頂いた皆様方に感謝し、これからも精進していきたいと思います。北陸の地域に対する自分の考えを整理でき、過去の受賞作品を見ることで新しい考え方を学べるこのコンペが、より多くの人に届き成長のきっかけになることを祈っています。また私自身、学生生活最後の年となる来年も是非応募したいと考えているので宜しくお願い致します。

佐野歩美さん

前橋工科大学大学院1年
第26回最優秀賞

私がこのコンペを知ったのは、学部4年生の時に校内に貼ってあったポスターがきっかけでした。私は、前橋で建築を学んでいるため周囲には北陸出身者は少なく、数少ない北陸出身として、これは出すしかない!と思ったことを今でも鮮明に覚えています。しかし、このコンペを知った時には、既に提出日が近づいていたため、来年は必ず出そうとその時に決めました。
今年、新型コロナウイルスにより世界が未曾有の事態を迎えているのを目の当たりにし、新建築や住宅特集などの建築専門誌では、毎号コロナに関する特集がなされるなど、私も何か考えなければならない状況になっている、と日々感じていました。そんな中、北陸の家づくり設計コンペが開催され、この状況と関連のある提案をするべきなのではないかと思う一方で、あまりにもテーマと逸脱した提案になってしまうのではないかという葛藤がありました。しかし、考えを深めていく中で、内と外を隔てる境界としての窓は、暮らしと社会を隔てる境界でもあるため、今回のテーマとは関係があると核心をつくことが出来ました。
今回、誰も経験したことのないこのような状況下で、ひとつの解答を導き出したことが、評価された要因のひとつではないかと考えています。以前、校内での設計課題で、先生から「知らないことが知りたいし、見たことないものが見たい」と言われたことをよく覚えています。誰も知らないこと、見たことのないものをつくることは、大変難しいことであると承知しています。しかし、現状の問題に真摯に向き合うこと、体験すること、たくさんの建築を見ることは、それに近づくことができる第一歩であると考えながら、私も日々精進しています。
私は、前橋で建築の勉強をしているため、建築に関しては富山に関わることはほとんどありませんでした。しかし、今回のコンペを通して、地元高岡を敷地に設定をしたり富山でプレゼンをしたりすることで、建築を通して富山に関わることが出来たように思います。
最後に、たくさんの作品の中から最優秀賞に選んで頂いたこと、大変光栄に思います。この経験を活かし、一層活躍できるよう精進致します。オダケホームの皆様、審査員の皆様には、このような機会を毎年設けて頂いていること、心から感謝申し上げます。

山口恭平さん

三重大学大学院
第25回 最優秀賞、第24回福井新聞社賞受賞

私がコンペに参加したのは第24回「冬も楽しい雪国の家」、第25回「みんなが集まる楽しい我が家」の2回、修士1年と修士2年の時です。複数のコンペを並行して行っているときに学校でポスターを見つけました。当時、自然を重視したパッシブな建築に興味を持っていて、このテーマなら北陸の環境を中心に置いた建築が作れるのではと考えたのが初応募のきっかけでした。北陸の雪吊りに形態のヒントを得ながら雪を味方につけ一年中快適に過ごすことのできる「冬“も”快適で楽しい家」を描きました。授賞式で自分以外の作品を見ると自分の作品と180°違うアイデアや自分には思いつかないようなアイデアに溢れていて勉強になったとともに足りないものを見つめ直すきっかけになりました。次の年が学生最後の年なのでもう一度必ずチャレンジしようと思っていました。
次の年は勝つことにこだわり、常にテーマを頭に置きアイデアを膨らませていきました。「みんなが集まる」というとても広く難しいテーマに対して最終的に「地域の住民と共に記憶が集まる」「住宅の材料が集まる」といった「みんなが集まる」の解釈を広げた作品を提案しました。まだまだ粗く、修正が必要な提案でしたが、満足のいく結果を出すことができたと思っています。
一つの作品を作り上げるには多くの時間、表現方法、技術が必要です。特にテーマに対するアイデアを考えること、膨らませることに多くの時間を割くでしょう。私は常にテーマを頭の片隅に置き、複数のことと並行してアイデアとして固めていくことが重要だと考えています。テーマに対して考え得るアイデアの種をメモし、自分の興味、インプットしたことと擦り合わせていきます。そのために多くのことを体験し、自分の興味は何なのか思考することを忘れないことが重要です。
オダケホームの皆様、審査員の皆様には院生の間、北陸で暮らすことに対する多くのインプット・アウトプットを通して大きく成長させて頂きました。これまで長い間続いてきたこのコンペがこれからも続いていきますよう応援しております。

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